2016年2月のブログ記事

  • 合掌のてのひら

    合掌のてのひら               ──K・Mへ 生を捨てる。死を捨てる。いかさまのこの世 に別れを告げる。妄想の死に、あるいは妄想 の死後に別れを告げる。ひとびとのフェティ シュな欲望。かませもののための玩具の勲章 と暴力の札束。この世の飾りから立ち去って、 おれは徒歩で歩む。 さあ、お... 続きをみる

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  • ポエム 愚者の問われ方

    愚者の問われ方 生を離れ、死を離れて、生きているいのち。 おれたちは苔の生えている石でできた手洗 い場所で、手を洗い、その水を飲んだ。草 原に寝そべって遊んだ。おれたちはそれぞ れどんな未来が拓けているのか、話したは ずだ。 それが今になって、いったい自分の人生で 何が起こったのか整理するのはすこ... 続きをみる

  • ポエム 消えることのない火

    消えることのない火 右手にあった、失った池を思いながら、そ の白壁の塀のぬかるんだ細道をいつも歩い ていた。白壁の塀はすっかり剥がれ落ちて、 黄土色に剥がれ、さらに深く灰色に剥がれ ていた。失った友、失った家郷。 その白壁から柘榴の樹が一本あって、おれ の眼を楽しませていた。柘榴の花を遠めに 見て... 続きをみる

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  • ポエム 年輪

    年輪 夢の収穫のなかで、おれたちは鎌を持って、 その一本いっぽんの砂糖黍を刈り採っていっ た。ただただ砂糖黍を採りいれるために、ど れだけの日数が過ぎていっただろうか。おれ たちの頭のなかで、伐採された砂糖黍の甘い 蜜が回転していた。 おれたちの手のなかに残るのは、その皮だけ だった。未来に甘い蜜... 続きをみる

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  • ポエム 行程のゆくえ

    行程のゆくえ いつも通る舗道は、線路との境を明確にする ために、洞窟をつららする白い水晶のかたち をした石杭で区別される。鉄路が赤錆びて繋 がっていて、路石は鈍いあかがね色に染まっ ているのが、おれの眼の高さに見える。ここ にじっとしていると、列車がやって来て鉄路 を打ち鳴らし、おおきくカーヴして... 続きをみる