ポエム 無明の水甕

無明の水甕


埋立地の倉庫に並び積まれている水甕。もは
やこの世に存在したかどうかも忘れ去られて
いる腐った水の溜まった水甕がある。


流行歌を唄うくらいの罪悪感の伴わない集団
的暴力のために、悪徳の貨幣を受けとるもの。
悪徳にかんして抑制をもたないのは、妄執に
かんする悪弊が脳髄の、つまりはそれが世間
の見本となってしまっているからだ。


水滴が一粒ひとつぶ落ちる。やがては大きな
水甕いっぱいになる。清水でも腐った水でも
それは同じこと。清水の水甕になるか、腐っ
た水の水甕になるか、どちらにせよ、そのも
のの人生がかかわっているのだ。


いま在るということは、いずれ遠からず無く
なることだ。みずからの人生を選ぶのはおの
れ自身なのだ。死ぬときになって、罅割れた
悔恨をする羽目になるのだ。


短い、とても短い人生で腐った水の溜まった
水甕になって破棄されるその数は非常に多い。
そんな水甕が埋立地の倉庫に山となって並べ
積まれているのだ。真実ははるかな過去から
不滅であり、不滅の電球がその倉庫にそれら
の水甕を照らし出している。