ポエム 天子の使徒二

天子の使徒 二
K・W氏に


福原跡に仮寓してから二ヵ月が経とうとして
いる。季節は穀雨に入った。明け方はまだ寒
い。おまえからの返事はまだ来ない。おまえ
のことだから、こころ動かざること、勝たざ
るを視ること猶勝つがごとし。みずからを省
みて直くんば、千万人と雖もわれ往かん、と
気を練っているのかもしれない。


天子の使徒よ、そのこころ、おのずから気宇
壮大なり。おれの量れるところではない。お
れには、いつも朗らかに笑うおまえの声が聞
こえてくるばかりだ。季節の移り変わりは早
い。健康には十分留意してほしいと願う。そ
ちらでは、まだ鶯の声が聞こえるだろうか。


天のこの民を生ずるや、先知のひとをして、
後知のひとを覚さしめ、と伊尹、孟子の言葉
をこころに刻んでいるのかもしれない。おそ
らくそうだろう。いつ戻ってくるのかは知れ
ないが、おまえはひそかに思っているはずだ、
われは天民の先覚者なりと。