ポエム 年輪

年輪


夢の収穫のなかで、おれたちは鎌を持って、
その一本いっぽんの砂糖黍を刈り採っていっ
た。ただただ砂糖黍を採りいれるために、ど
れだけの日数が過ぎていっただろうか。おれ
たちの頭のなかで、伐採された砂糖黍の甘い
蜜が回転していた。


おれたちの手のなかに残るのは、その皮だけ
だった。未来に甘い蜜を残すためには、いま
その皮だけで満足しなければならなかった。
そんな風に年月が過ぎてゆくのを疑わなかっ
た。


夢の収穫から覚めて、おれは食事を摂り、そ
の夢のなかでは取り残された困難な現実を思
ってみる。どんな労苦が夢から抜け落ちたの
か、永く人間でいると、その細かい苦労が眼
に見えるようだ。


今日おれは新しい詩を書き綴りながら、どれ
だけの労苦を搾りだしているのか、よく判っ
ているつもりだ。困難な道から困難な道へと
おれの生活は続いている。読み手は何処にい
るのか。


この世という憂き世の夢のなかで、また睡り、
生きていることの証として、現実の脳髄のは
たらきに加えて、それに何らかな作用を起こ
して、おれたちは機械のなかで搾りだされる
砂糖黍の甘い蜜に魅せられたのだ。