合掌のてのひら

合掌のてのひら
              ──K・Mへ


生を捨てる。死を捨てる。いかさまのこの世
に別れを告げる。妄想の死に、あるいは妄想
の死後に別れを告げる。ひとびとのフェティ
シュな欲望。かませもののための玩具の勲章
と暴力の札束。この世の飾りから立ち去って、
おれは徒歩で歩む。


さあ、おまえの欲しいものは揃っている。好
きなだけとって行け。おまえの黄金の玩具箱
を限りない欲望で満たせ。ギャングストーカ
ーよ、ノイジーな音を高らかに掲げよ。欠け
た甍のような無知と虚偽で成り立つおまえた
ちの生き方が問われることはないのだから。


うんざりする虚栄の咲きほこる地上の光。失
われた闇夜のなかでの享楽。舌先に飾る屈辱
の言葉。見えなければ許されるレーザー光線
という拷問を楽しめ。偽善者たちのみずから
を正当化して騙る正しい悪。それでも、おま
えは満足することがない。貪欲はさらに貪欲
をむさぼるからだ。


青嵐のなかで、さらにまたおれのなかの青嵐
のなかで掌を合わせるものがいる。生死を捨
てて生きる。それが最上の安楽だ。生理的な
ことを除いて、みずからの頭に浮かぶことが
ほとんど妄想だと分かるからだ。生死を捨て
て生きるいのち。この生きているいのちだけ
が本物だ。あとは妄想として、永くこころに
残すことはない。