ポエム 愚者の問われ方

愚者の問われ方


生を離れ、死を離れて、生きているいのち。
おれたちは苔の生えている石でできた手洗
い場所で、手を洗い、その水を飲んだ。草
原に寝そべって遊んだ。おれたちはそれぞ
れどんな未来が拓けているのか、話したは
ずだ。


それが今になって、いったい自分の人生で
何が起こったのか整理するのはすこぶる難
しい。分からない暴力ばかりのこの世で、
われわれは夢を見つづけているようだ。


お金について語る人の多いなか、おれは真
実を求めてさまよった。われわれはただ生
きて死ぬだけの存在なのだが、その生き方
が問われているのだ。


どのように生きるべきか、おれは興法寺に
行くまでの最後の石段を息せき切って登っ
たものだ。自分にされて嫌なことを他人に
しないことが法で決まっている。それは怒
りと貪りと愚かな行為だからだ。


行為がすべてを物語る。苦しみといっても、
楽しみといっても、結局のところ、生きて
いるあいだのことなのだ。死んだつもりで
考えてみろ。


苦楽をともに捨て、また善悪、生死をとも
に捨てて生きてゆくことが最上の生き方な
のだと知る。興法寺の水に到るまではほん
の少しだが苦しく厳しい坂道を、足もとに
気を付けて、また仰ぎ見て歩くのが楽しみ
だったのだ。